資料に記載するデータを最新に更新するために、農業産出額のデータをチェックしたところ、サツマイモ(かんしょ)が1,000億円を超えて、ジャガイモ(ばれいしょ)と順位が逆転していました。
生産農業所得統計
全体像や他の作物の動向も気になったので、全体的&10年間の推移をチェックしてみたら、日本農業の変化が読み取れたので、書き留めておきます。

まずは、全体像から
確定値は2023年までなので、2014~2023年の10年間のデータを使用しました。
この間に日本の農業産出額全体は約13%増加しています。
この数字だけ見ると「農業はまだ伸びている」ように思えます。
ただ、他の物価指数と並べて見ると話は少し変わります。
2014年→2023年の10年間の上昇率を並べてみると…
- 全体物価(CPI総合):+8.4%(年平均 約0.9%)
- 食品物価(CPI食料):+20.0%(約2.1%)
- 農産物価格(農業物価指数):+28.5%(約2.8%)
- 農業産出額:+13.4%(約1.3%)
この10年で、食品価格は+20%、農産物(農家段階の価格)は+28.5%と、農産物価格の上昇が突出しています。
一方で、産出額の伸びは+13%程度なので、価格は大きく上がったが、生産量(ボリューム)は減っていて、単純計算でこの10年で生産量は約10%ほど減少していると推計されます。この間の人口減少率は2%程度なので、単純に食べる量が減ったわけではなさそうです。
さらに言えば、売上(産出額)は増えていても、肥料・燃料・飼料などの経費上昇も同じく大きいため(+27.7%)、生産者の利益が増えているわけではありません。
▼上位品目をチェック
品目別に見ると、トップ10のうち半分が畜産品(牛・鳥・豚)で、どれも産出額は増加しています。食生活の変化に加え、コスト上昇を価格に転嫁しやすい構造が表れています。価格が相場で乱高下しくにくく、その価格が野菜ほどニュースで話題にならず、じわじわと上がっています。同期間の飼料の価格上昇率は+41.3%なので、儲かっているわけではなく、、倒産件数も多いです。
特に鶏卵は、鳥インフルエンザの影響を強く受け、価格が大きく上昇しました。昔は「価格の優等生」と言われていた卵も、今では気軽に買える存在とは言いにくく、日常食材の中ではかなりの高級品になっています。
一方、米は2023年までの10年間は停滞しています。特に2023年までの5年間はマイナス成長です。ただし2024年の「令和の米騒動」を経て、現在は高値水準となっています。今後、米が産出額を押し上げるのか、それとも消費離れを加速させるのか。日本農業の最大の分岐点な気がします。
▼「勝ち組」と言えそうな品目は…
・ぶどう(10年間+88%)
シャインマスカットに代表される高単価品種と輸出。
「品種=価値」が成立している好例。
・いちご(10年間+27%)
派手さはないが、ブランド化で着実に成長。りんごやみかんも同じく。
・サツマイモ(10年間+17%)
生産量は886,500トンから715,800トンと20%近く減少しているにもかかわらず。焼きいもブームにより単価上昇と輸出拡大。
▼「作る農業」から「価値を売る農業」へ
データを見る限り、日本農業の生き残る道は高付加価値化にありそうです。
ジャガイモは「ポテトチップス」「家庭のカレー」といった生活必需品(コモディティ)です。一方、サツマイモはここ10年ほどで「スイーツ」「健康志向の軽食」という嗜好品(ベネフィット)へと大きく変化しました。この逆転は、日本農業が「安く大量に作るインフラ」から、「高くても選ばれるブランド」へと交代している象徴的な出来事な気がします。
▼とはいえ、忘れてはいけないこと
ただし、果物や野菜でお腹を満たすことはできません。
高付加価値作物で稼ぎつつ、私たちの命の土台である「主食(特に米)」の生産基盤をどう次世代につないでいくのか。ここが、日本農業の本当の課題だと思います。
ちなみに、サツマイモは「嗜好品として稼げる」と同時に、いざという時の「エネルギー源(主食)」にもなる稀有な存在。ここを覚えておいて欲しいですね。